2011年8月に「杉本文楽 木偶坊 入情 曾根崎心中付り観音廻り」を初演、2013年のマドリッド、ローマ、パリ公演も好評を博し、人形浄瑠璃文楽に衝撃を与えてきた小田原文化財団プロデュースによる「杉本文楽」が今回挑むのは「女殺油地獄」。この近松の名作は、何と言っても “油まみれの凄惨な殺人”が印象に残ります。杉本文楽では、あえてその<殺し>のくだりにこだわり、人間国宝(芸術院会員)鶴澤清治の新作曲による「序曲」、「下之巻・豊島屋」をお聴きいただきます。また、“刺いてはゑぐり抜いては切”の杉本博司演出で“油の地獄の苦しみ”の場面も必見。究極の「見取り狂言*」をお楽しみください。
プログラムは、口上、序曲、下之巻・豊島屋の三部構成。冒頭の[口上]では、近松門左衛門(人形)がご挨拶。続く[序曲]では、本作品のテーマとなる三味線曲の演奏。そして[下之巻 ・豊島屋]の「前」は素浄瑠璃の形式、クライマックスの「奥」では人形浄瑠璃にて油地獄をしめくくります。
*「見取り狂言」とは、演目の名場面だけを部分的に上演する形態。
『女殺油地獄』について
享保六年(1721)大坂竹本座初演。作者は近松門左衛門。油店河内屋の与兵衛は放蕩三昧、借金の返済に困り果てる。継父・徳兵衛と実母・お沢の心配も余所にして、与兵衛は豊島屋の女房お吉に返済の金を無心するが断られ逆上、お吉を殺しに及ぶ。油店での殺人場面では、人形ならではの表現方法で、油まみれの地獄の惨状を演出する。
「杉本文楽 女殺油地獄」 見どころ・聴きどころ
1.近松門左衛門の人気作品「女殺油地獄」の“おなじみのシーン”をさらに印象深く演出
杉本文楽第一弾では、「曾根崎心中」の近松の原文復活にこだわり、その全文を網羅し上演しましたが、第二弾の「女殺油地獄」では、“全文”ではなく印象的な“部分”に特化した上演形態といたします。
「女殺油地獄」というと、観客は総じて、油まみれの殺しのシーンを想い浮かべます。杉本作品第二弾の本作では、その脳裏に焼き付くシーンをさらにクローズアップして、杉本文楽流の“殺しの美学”をお届けします。
2.杉本文楽ならではのユニークな構成により、わかりやすく文楽に親しむ演出
人形浄瑠璃文楽は、太夫・三味線・人形遣いが三業一体となり、ひとつの戯曲の世界観を創り上げる演劇です。杉本文楽では、「女殺油地獄」をモチーフにしながら、あえて三業それぞれの持ち味をプレゼンテーションするユニークな構成としました。冒頭の①「口上」では人形が主(あるじ)となってご挨拶申し上げます。人形の様々な動き、しぐさから、単体の人形の持つ魅力に触れていただきます。続く②「序曲」は三味線の単独演奏。太棹三味線の響きを存分に体感していただきます。そして③「下之巻・豊島屋<前>」は、太夫の語りと三味線が織り成す素浄瑠璃の世界。太夫の語り芸により登場人物の語り分けを披露します。クライマックスの<奥>では、主人公の人形2体が加わり、ここで人形浄瑠璃文楽となり、太夫・三味線・人形遣いの三業一体の見事なセッションをお楽しみいただきます。
3.「下之巻 豊島屋」と「序曲」を人間国宝・鶴澤清治(三味線)が新作曲
杉本博司の演出意図に賛同した人間国宝・鶴澤清治が、油まみれの殺人シーンで有名な「豊島屋」(現行曲では「豊島屋油店の段」)を近松の原文どおりに新作曲します。曲は「前」と「奥」にわけて構成。「前」を素浄瑠璃に、「奥」を人形浄瑠璃にと、その演出意図に沿った新作曲で、素浄瑠璃、人形浄瑠璃双方の魅力をご堪能いただけます。なお、この「豊島屋」の新作曲は、現行曲が作曲された昭和27年(1952)以降、初めての試みとなります。加えて、作品全体のテーマ曲「殺しのテーマ」を三味線序曲として鶴澤清治が新たに作曲。「女殺油地獄」の“殺し”にとことんこだわります。
4.本物志向の舞台美術(特別協力:博物館明治村)
舞台美術の要素として、油まみれのシーンで欠かせないものは、「油桶」。凄惨な殺しのシーンの背景を飾る油桶の数々は、博物館明治村(愛知県犬山市)より特別に拝借した“本物の油桶”を使用。明治村内にある国重要文化財「家住宅」内に常設展示している油棚と油桶が「女殺油地獄」の舞台上に登場します。
公演タイトル:「杉本文楽 女殺油地獄」
原作:近松門左衛門 「女殺油地獄 下之巻より」
構成・演出・美術:杉本博司
作曲・演出:鶴澤清治
振付:山村友五郎
公演日時:
2017年
8月11日(金・祝日) 18時
8月12日(土) 14時/18時
8月13日(日) 13時/17時
会場:
世田谷パブリックシアター(東京都世田谷区太子堂4-1-1)
主催・企画制作:公益財団法人小田原文化財団
提携:公益財団法人せたがや文化財団 世田谷パブリックシアター
後援:東京都世田谷区
特別協力:博物館 明治村
制作協力:公益財団法人文楽協会
協力:国立文楽劇場
助成:日本万国博覧会記念基金 (http://www.osaka21.or.jp/jecfund/index.html)
出演者:
太夫:
竹本千歳太夫、豊竹呂勢太夫、豊竹靖太夫
三味線:
鶴澤清治、鶴澤藤蔵、鶴澤清志郎、鶴澤清馗
人形:
吉田幸助、吉田玉佳、吉田一輔
桐竹紋臣、吉田玉勢、吉田玉翔、吉田玉誉
吉田玉彦、吉田玉路、吉田玉延、吉田簑悠
囃子:
望月太明蔵社中
チケット情報:
◎チケット料金(全席指定・税込)
一般:
A席(1階・2階席)9,000円
B席(3階席)6,000円
◎チケット取扱い
チケットの取り扱い窓口は下記のとおりです。
・世田谷パブリックシアター チケットセンター
03-5432-1515(10:00~19:00)
オンラインチケット(要事前登録・24時間受付)
PC:http://setagaya-pt.jp/
携帯:http://setagaya-pt.jp/m/
・チケットぴあ
0570-02-9999(音声自動応答 Pコード 458-889)
http://pia.jp/ (PC・携帯・スマートフォン共通)
チケットぴあ、セブンイレブン、サークルK・サンクス各店舗で直接購入可能
・イープラス
http://eplus.jp/ (PC・携帯)
ファミリーマート各店舗内Famiポートで直接購入可能
チケット一般発売日
6月10日(土) 発売開始 (世田谷パブリックシアター、ぴあ、イープラス)
<お客様お問合せ先>
公益財団法人小田原文化財団
tel: 0465-42-9170(平日10時~16時)
email:info[atmark]odawara-af.com
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