杉本博司はかつて、自身の作家活動の原点とも言える写真技法を和歌の伝統技法である本歌取りと比較し、「本歌取り論」を展開しました。この中で杉本は、日本文化の伝統は旧世代の時代精神を本歌取りすること、つまり古い時代の感性や精神を受け継ぎつつ、そこに新たな感性を加えることで育まれてきたものであろうと述べています。更には、日本だけでなく世界中の文化に本歌を求め、自身の創作においても本歌取りを試みています。
本展で杉本は、自身の表現領域の拡大に伴い、写真技法のみに留まらない更なる「本歌取り論」の展開を試みます。時間の性質や人間の知覚、意識の起源といった杉本が長年追求してきたテーマを内包しながら、千利休の「見立て」やマルセル・デュシャンの「レディメイド」を参照しつつ独自の解釈を加え、新たな本歌取りの世界を構築します。
この展覧会では「春日神鹿像」や「雷神像」をはじめとする当財団所蔵品が多数出品されるほか、姫路の文化財に触発されて生まれた杉本の新作も初公開されます。
主要展示作品などの詳細は、姫路市立美術館ホームページをご参照ください。