小田原文化財団では、2020年より美術ライターの橋本麻里氏をファシリテーターにお迎えし、年間を通じてレクチャーシリーズを開始する運びとなりました。このシリーズでは、江之浦測候所の背景をなす、人文科学から自然科学にいたる幅広い分野からテーマを選び、講師をお招きして、江之浦測候所の設立コンセプトにより深くアプローチするレクチャーを順次、開催してまいります。
記念すべきレクチャーシリーズの第1回目は、エジプト考古学者/名古屋大学高等研究院准教授・河江肖剰(かわえゆきのり)氏を講師にお招きします。江之浦測候所の建物は、二至二分の際に日の出を測候できるように冬至光遥拝隧道、夏至光遥拝100メートルギャラリー等が計算されたうえで配置されていますが、太陽の動きを観測することは、古代エジプトの時代から行われていました。天体の動き、地上の建造物との関わりを古代エジプト人はどのように考えていたのか、また死の世界、想像の冥界といった概念を、実際に江之浦測候所を見学しながらお話しいただきます。
「天の太陽が西の砂漠に沈むように、地に住む人も死ぬと西の彼方から冥界に入り、十二の門や十二の地下の世界、あるいは六つの洞窟を舟で旅し、東の空から太陽とともに昇る。古代エジプトでは、そのようにして再生すると信じられていました。さらに毎年定期的に起こるナイル川の氾濫と、それを知らせるシリウスも再生と関わっていました。地上に起こることと、天で観察されることには、すべて具体的な意味があり、それは人にとって最大の謎である死とその行く先を説明するものでした。講演では、古代エジプトの天と地と冥界をめぐるように、江之浦測候所をまわり、数千年前の死生観に身体的に迫ってみようと思います。」(河江氏)
日時: 2020年2月1日(土) 15:30~18:30
参加費: 5,500円(税込。江之浦測候所の見学入館料を含む)
会場: 江之浦測候所
定員: 30名
申込み方法:2020年1月6日(月)午前10時から小田原文化財団公式ホームページ 見学予約ページより先着申し込み制
講師: 河江肖剰(かわえ ゆきのり)
エジプト考古学者/名古屋大学高等研究院准教授
1992年から2008年までエジプトのカイロ在住。古代都市ピラミッド・タウンの発掘や、レーザー・スキャナーやドローンなど最新技術を用いたピラミッドの計測に従事。2016年米国ナショナルジオグラフィック協会より、エマージング・エクスプローラー(新世代の探求者)に選出。2018年、バチカン市国にて国際ジュゼッペ・シャッカ賞受賞。TBS世界ふしぎ発見やNHKスペシャルなどに出演し、エジプト文明についての知見を広めている。著書に『ピラミッド – 最新科学で古代遺跡の謎を解く』(新潮文庫)など。
ファシリテーター: 橋本麻里(はしもとまり)
日本美術を主な領域とするライター、エディター。公益財団法人永青文庫副館長。出版社勤務を経てフリーランスに。新聞、雑誌等への寄稿のほか、NHKの美術番組を中心に、日本美術を楽しく、わかりやすく解説。著書に『美術でたどる日本の歴史』全3巻(汐文社)、『京都で日本美術をみる[京都国立博物館]』(集英社クリエイティブ)、『変り兜 戦国のCOOL DESIGN』(新潮社)、共著に『SHUNGART』『原寸美術館 HOKUSAI100!』(共に小学館)、編著に『日本美術全集』第20巻(小学館)。ほか多数。